「鯉料理って、結構うまいよ」
きっかけは、そんな知人の言葉だった。
その人は地元で食べていたらしい
でも、僕は一度も食べたことが無い。
「行ったことは無いけど、この辺にも店はあるよ」
とその知人に教えてもらった。
こい、コイ、鯉・・・
はたして、食べれるモノなのだろうか?
鯉は悪食で、泥の中でも生きる魚だと聞いたことがある
つまり、あまり綺麗なイメージの魚ではない。
何よりあのパクパクした口
あれを食べるのか、と思うと
なんとも微妙な気持ちなった。
「食感が楽しいんだよ、フグとかみたいにコリコリしてさ」
フグなんて高級魚、もちろん食べたことが無い。
何も分からないまま、あのパクパクした口を想像し
その日は家路につく。
とは言え、気にはなる
食わず嫌いは、良くない
先入観も、良くない
それに、あの知人のおすすめは
今までほぼ当たっている。
そんな言い訳で、自分を奮い立たせて
後日、そのお店へと向かうことにした。
林の奥にあったお店
電車と徒歩で、小一時間
お店の案内板が見えてきた
どうやらここを曲がるらしい
大通りから脇道へ逸れる。
「おぉ・・・」
舗装されてはいるが、荒い作りな道路
ひび割れていて、ガタガタである。
そんな道の両脇に
こじんまりとした林が生い茂っている。
いかにもって感じの風景、思わず声がもれる
林の木漏れ日も心地よい
晴れて良かった、絶好のお出かけ日和である。
僕は少し、気分が上がった。
お店に到着
林の道を抜けていった先に、お店はあった。
古い日本家屋の店構えだ。
老舗と書いてあったのも頷ける。
店員さんに案内され、席に着く
初心者おすすめと言うことで
鯉を含む、川魚のコースを頼んだ。
お腹はペコペコ、今の僕には持ってコイだ。
まだ昼前で、お客はまばら
混む前で良かった、計画通りである。
窓から田園地帯が見渡せる
のどかな風景、これもこのお店の魅力らしい。
温かいお茶を飲み
歩き疲れた体に、やっと一息入れる。
ふと、脇に目をやると
微かにだが、竹林が顔をのぞかせる。
僕は竹林が好きだ。
あおあおとし、風に揺られる竹の葉
ここは静かだ。
ゆっくりとした時間の中で
僕は料理に期待を膨らませていた。
ますの唐揚げ
僕が風景に見とれてる間に、料理が運ばれる。
最初の料理は
麦とろめし・お新香・大根おろし・お味噌汁
そして、ますの唐揚げである。
美味しそう、だが川魚
骨が多そう、どうだろか?
頭から尾まで、骨も食べれるらしい。
僕は食道が細く、よく物が詰まる
つまり川魚は、天敵である。
とは言え食欲には勝てない
頭から、いただきます。
これは・・・美味い、すごく美味い
えぐみが無い、サクサクと魚の旨みしかない。
頭でこれである、メインの胴はどうなのか?
少し興奮してきた。
お味噌汁で頭を落ち着かせる
が、これも美味い。
落ち着く暇が全くない。
お新香を食べる。
薄味だ、だがいい箸休めになる
実に頼もしい、大事にとっておこう。
再びますへと箸を進める。
半分以上食べたところで、大根おろしを思い出し
慌てて乗せて残りをいただく。
尾のパリパリした食感は、チップスに似ている
ちょっとしたデザートみたいだな
やはり頭から食べたのは正解だった。
ちょっと得をした気分と
食べきった名残惜しさの中
次の料理を待つのだった。
鯉のあらい
ますの唐揚げに、後ろ髪を引かれつつ
”鯉のあらい”がやってくる。
特製の辛味噌につけて、食べるらしい。
来たな・・・鯉よ
当然あの顔は出てこない、刺身である。
だが、パクパク顔のあの魚の
何処かの部位では、あるのだろう。
見た目は綺麗、さすが観賞魚である
鯛の刺身に、似ているか?
あいにく魚には、詳しくない。
悩んでいても、仕方がない
これを食べに、ここまで来たのだ。
ますで元手は、十分とった
何も臆することは無い。
いざ、いただきます。
淡泊だ
あの濃い顔から、想像つかないほどに
淡泊だ。
コリコリしている。
なるほど、ちょっと楽しいかもしれない。
辛味噌はどうだろう?
美味い、めっちゃウマい
これ、すごくウマい
そうだ、麦とろめしに、合わせたらどうか。
ウマい、めっちゃ美味い
物凄く美味い
これは、大根おろしとも合いそうだな
・・・大事にとっておこう。
鮎の塩焼き
辛味噌という、新たな仲間を迎えて
鮎の塩焼きが、運ばてくる。
鮎の塩焼きは、経験済みだ。
川魚の中では食べやすい部類
しかし、僕にはきつかった
主に骨が。
しかし、ますのから揚げでわかった事がある
このお店の骨は、食べられるのだと
ならば、怖いものなど何もない
思う存分、鮎を楽しめばいいのだ。
一応、食べやすい腹から食べよう。
お腹、いただきます。
やはり、やはりだ。
骨は食べれる、身は美味い。
ありがたい、とてもありがたい。
さすが川魚の女王。
ほんのりと、いい香りがしてくる。
心なしか、お顔も美人さんに見えてくる
美魚?
そんなご尊顔とも、お別れ。
頭を、いただきます。
・・・さすがに、えぐみがある。
どうにか、出来ないものだろうか。
ん?そうか
大根おろしと辛味噌で、どうにかなりそうだ。
やはり、美味い
辛味噌のポテンシャルが凄まじい。
なんにでも合いそうではあるが
すべて辛味噌あじになってしまうのが難点か。
しかし香味付けとしては、頼もしい味方だ。
ありがとう辛味噌
おかげで、最後まで美味しくいただけたよ。
また来よう
食後のお茶で、腹を休ます
一息入れて、周りを見渡す。
食べてるときは、気づかなかったが
どうやら、賑わってきているようだ。
時間は正午、それもそうか。
賑わうと言っても、ぎゅうぎゅうではない
常連さんが、ほとんどのように思える。
こういう静かな賑やかさも、心地よいものだ。
落ち着いた腹をなで、立ち上がる。
忙しそうに駆け回る店員さんに
申し訳なさを感じながら、お会計
ささっと済ませ、外に出る。
久々の現金払い、ちょっと緊張したな。
日差しがまぶしい、外套は少し暑いくらい。
再び林の道に足を向け、日常へと歩みを進める。
「また来よう」
こんな言葉が、自然ともれる。
僕はたいそう気に入ったようだ。

わぁ!すっごい美味しそうだね 今度は二人で行こうね!

そうだね 二人でゆっくり食べに行こうか。



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